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カンディンスキー:インプレッション(3) [スケッチ・美術系]

impressin3-2_1.jpg カンディンスキーの風景画は、次第に目に見える自然を解体し、色彩の響き合いに重点が移って行く。そうした過程で思索されたのが『芸術における精神的なもの』(1911年刊)。

 二十歳の頃に読んで難儀したので、再読したいとは思わぬが、彼はこう記しているそうな。

 ~実景から解放されたコンポジション(構図、構造、構想画)を描くことが目標になった。それは印象派によって壊された欧州の偉大な構想画(コンポジション)の伝統を、今度は〝神話・聖書世界〟から脱却して再興することだ。

 それは、次のように展開される。「内的ヴィジョンの直接的な表現(即興、インプロヴィゼーション)や、目に見える自然の解体(印象、インプレッション)が必要かつ大切。それには精神性かつ色彩と形体をめぐる綿密で持続性の省察も不可欠~」

 二十歳の頃に、こんな小難しい書と格闘していたとは。カンディンスキーは、かくして次第に抽象絵画へ向かって行く。1912年、46歳で初の個展をベルリンで開催。インプレッション・シリーズ、インプロヴィゼーションン・シリーズ、そしてコンポジション・シリーズ。

 まずはインプレッション(impression):外面的な自然から受けた直接的印象。これが素描的・色彩的な形態をとって現れるもの。この種の絵を私は「印象、インプレッション」と名づける。

 作例に1911年の「インプレッションⅢ(コンサート)」を挙げてみよう。彼は友人と共に室内楽コンサート(アルノルト・シェーンベルクの弦楽四重奏第二番。別の惑星の空気を感じるような風変わりな作品)を聴いた。聴衆は驚き笑いヤジを飛ばしたが、彼には天啓のように響いたそうな。

 その感動を二日後に一気に描いた。黒く大きなグランドピアノ、ピアニスト、聴衆、右斜めに傾いた構図、白い縦線は不協和音か。

 カンディンスキーはチェロとピアノが得意。音楽を聴くと、視覚的な感性が震えるそうで、音楽は画家として欠かせぬ要素。同作を描いた後で、彼は興奮して作・演奏者に手紙を書いた。面白そうだから〝即興〟模写をしてみよう。

 おっと、数ヶ月使っていなかった「ホルベインガッシュ」半分が凝固していた。比して10年も前の「ニッカーガッシュ」が使えたり。顔料次第で凝固按配が違うのか。あたしは〝インプレッション・インプロヴィゼーション、コンポジション~〟と呟きつつ、新宿・世界堂まで「ターナーアクリルガッシュ」(安価)を求めに往復ウォーキングに相成候。

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