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方丈記13:飢餓、そして大地震 [鶉衣・方丈記他]

genryaku2_1.jpg 元暦2年(1185、文治元年)3月に壇ノ浦の決戦。そして7月9日、大地震が京を襲います。

 又元暦二年の比、大なるふる(大なる震る=大地震)こと侍りき。其様つねならず。山くづれて川をうづみ(埋み)、海かたぶきて陸(くが)をひたせり。土さけて水わきあがり、いわほわれて谷にまろび(まろぶ=転ぶ)入、渚こぐ船は波にただよひ、道行駒は足の立ど(立ち所=足場)をまどはせり。況や都のほとりには存々所々(至る所)、堂舎(大きい家と小さい家)塔廟(仏舎利を納めたり死者供養の建物)一(ひとつ)として全(また)からず(完全でない)。或はくづれ、或はたふれたる間、塵灰立上りて盛成、煙のごとし。地の震ひ、家の破ふるる音いかづち(雷)にことならず。家の中にをれば、忽に打ひしげなんとす。はしり出れば、又地われさく。羽なければ、空へもあがるべからず。龍ならねば、雲にのぼらんこと難し。をそれの中に恐るべかりけるは、只地震なりけりとぞ覚侍りし。

 「海は傾きて陸をひたせり=津波」(震源地は琵琶湖。同湖の水で京都水没)、「土さけて水わきあがり=液状化」だろう。「羽なければ空をも飛ぶばからず」に、3.11の恐ろしい津波に、カモメらが飛んでいる映像を思い出します。

 「陸」のルビは「くが」。くずし字辞典に「陸(リク、ロク、おか、くが)」。古語辞典にも広辞苑にも「陸(くが)」がちゃんと載っている。この歳まで日本語で生きてきたのに、未だ知らぬ〝読み〟に出会って少々慌てます。同じように「うづみ=うづむ=埋む」。「まろび=まろぶ=転ぶ」。「立ど=立ち所、足場」。「いかづち=雷」。古語辞典が手放せない。旧仮名、歴史的仮名遣も手ごわいです。例えば「堂舎塔廟(だうしゃたふめう)」。

 この地震記述は『平家物語』巻十二に、そっくり引用されています。またここで筆写の江戸本には、岩波文庫版にはない文章が続きますが、それは次回~。

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