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方丈記15:我身と栖の徒なる様 [鶉衣・方丈記他]

subeteyono1_1.jpg 長明は、五大災害を記した後で、こうまとめている。

 すべて世の有にくき(在り難き=生きて行くのが辛い)事、我身と栖(すみか)とのはかなくあだなる(儚く徒なる)様、かくのごとし。いはんや所により、身の程にしたがひて、心をなやますこと、あげてかぞふべからず。もしをのづから身かなはずして権門のかたはらに居る者は、ふかくよろこふ事はあれども、大にたのしふにあたはず(能はず=できない)。歎ある時も声をあげて泣事なし。進退やすからず。立居につけて、恐れをののく。たとへば雀の鷹の巣に近づけるがごとし。もしまづくして、富め家の隣にをるものは、朝夕しぼき姿を恥てへつらひつゝ、出入妻子僮僕のうらやめるさまを見るにも、富め家の人のなひがしろなるけしきを聞にも心念々にうごきて、ときとしてやすからず。

 五災害のまとめゆえ、ここは気持ちを引き締めて一語一語音読し、意を頭に叩き込みながら筆写です。依ってメモも多くなった。●世の有にくき=世の在り難き=生きて行くのが辛い。●徒なる=はかない、むだ。●いはんや=況んや=いはむや=言うまでもなく、まして。●身かなはずして=身叶はずして=望まずに、適合せず。(岩波文庫版は「身数ならずして」で意が違う)。●進退やすからず=行動がしにくい。●すぼき=岝き=みすぼらしき、肩身がせまい、ほっそりして。●僮僕=しもべ、召使の少年。●けしき=ようす、そぶり、顔色、態度。●念々=仏教語。一刹那一刹那、いろいろの思い。

mosisebakiti_1.jpg もしせばき地に居れば、近く炎上する時其害をのがるゝことなし。もし辺地にあれば往反わづらひおほく、盗賊の難はなれがたし。いきほひ有者は貪欲ふかく、ひとり身なるものは人にかるしめらる。宝あればおそれおほく、貧しければ歎切也。人をたのめば、身他のやつことなり。人をはごくめば、恩愛につかはる。世にしたがへば身くるし。又したがはねば狂へるに似たり。いづれのところをしめ、いかなるわざをしてか、しばしも此身をやどし、玉ゆらも心をなぐさむべき。

 ●往反=わうばん、往復すること。●切=せち、せつ。しきりに、ひたすら、はなはだしいさま。●身他のやつごと=注釈によって「身、他」と読点、「身他」がある。やつ=奴もある。「身、他の奴事」と解釈した。●はごくめば=はぐくねば。●玉ゆら=しばし、少しの間。古文に日頃から親しんでいれば、辞書をひかずもよいのだが。

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