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方丈記23:草庵、早や五年~ [鶉衣・方丈記他]

hodosemasi_1.jpgokatakototokoro_1.jpg 大かた此所に住初(すみそめ)し時は、白地(あからさま)とおもひしかと、今迄に五とせを経たり。仮の庵もやゝふる屋(岩波文庫は〝ふるさと〟)となりて、軒にはくち葉ふかく、土居苔むせり。

 をのずから事の便に都を聞ば、此山に籠ゐて後、やんごとなき人のかくれ給へるもあまた聞ゆ。まして其数ならぬたぐひ、尽くしてこれをしるべからず。たびたびの炎上にほろびたる家、又いくそばくそ。たゞかりの庵のみ、のど(長閑)けしくて恐れなし。

 ●白地=あからさま、にわかに、突然、ちょっとの間である、しばらく。●むせり=咽ぶ、噎ぶ。詰まらせる。●おのづから=たまたま、偶然。●やんごとな=やむごとなし=捨てて羽おけない、重大である、はなはだ尊い、別格である。●尽くしてこれしるべからず=知り尽くすことはできない。

 程せばしといへども、夜ふす床あり。昼居る座あり。一身をやどすに不足なし。がうな(やどかりの古名。岩波文庫は〝かむな〟)は、ちいさきかひをこのむ。これよく身をしるによりてなり。みさごは荒磯にゐる。すなはち人をおそるゝによりて也。我又かくのごとし。身をしり世をしれらば、願はず、ましらはず。たゞしづかなるを望とし、愁いなきを楽とす。

 ●ましらはず=ためらわず、不安の念なく。岩波版は〝わしらず〟で校注に「あくせくと奔走しないこと」とある。


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