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大島の西風強し収束線 [週末大島暮し]

nisi2_1.jpg ロッジ前の海・波、貝、野田浜の溶岩をお勉強したら、冬の強い西風(ニシ)についても知りたい。

 ロッジを建てた当初は、防風林に守られていた。今は〝開発(防風林伐採)〟されて海一望。つまり冬の強い西風に直撃されるようになってしまった。

 先日の神田古本市で團伊玖磨『八丈多与里』を立ち読みしたら、こんな一文に惹かれて買ってしまった。

 ~ここ暫らく、八丈島は吹き続ける西風の中に居た。年が変わる頃から、毎年の定めの通り、西風は春を産む陣痛のように、朝も、昼も、夜も吹き荒んだ。眼に見えぬ冷たい気体の塊りは、来る日も来る日も西の海から島を攻撃して止まぬばかりか、勢い余った日には、ぐるぐると廻りながら、北から東からも島に攻め寄せた。

 ~冬の伊豆七島は、西風の強い日が多く、一旦風が吹き始めると数日は吹き止まぬ事も間々あって、風が吹くと実際の温度よりもずっと寒く感じるのが人の常だから、そういう日は、戸外を歩くのは辛い。

 「ははっ、小生と同じく冬の西風に怖がっている人あり」。ここはひとつ、伊豆諸島西海岸(大島西海岸)に吹く冬の強い〝西風(ニシ)〟のお勉強をしなければいけません。

 まずは台風。南洋で発生した低気圧が西に移動し、その後に偏西風となって日本列島を襲う。日本は端から西風を受ける定めにある。そして冬の季節風(寒冷高気圧、北西風)が問題となる。

 冬の季節風は、日本海を越えて日本列島を襲う。中部山岳に当たった季節風は北回りで迂回する風と、西回りに迂回する風に分かれる。北回りの風は関東平野へ回り込み、西回りの風は駿河湾を回り込んで、二つの風が伊豆諸島北で合流する。これを「季節風の収束線」と云うらしい。

 北回りの風は陸上を経て来るので、風速は弱いが低温の「北東風(ナライ)」になる。駿河湾を回って大島を襲う風は、海上経由ゆえに勢いがある。これが冬の強風「西風(ニシ)」になる。大島は楕円形で、中央に三原山がある。特に元町~野田浜の西海岸に「西風(ニシ)」が襲い、特に先端の乳が崎辺りに風当たりが強い。一方、泉津~筆島辺りには北東風(ナライ)が吹く。これが伊豆諸島(特に大島~新島)の冬の特異な現象になっているらしい。(『大島町史/自然編』他を参考)

 大島の先人は、この辺がわかっているから、防風林で囲った中に畠や家を建てていた(ロッジ地もアヤメ科ワットソニア・アルバー=檜扇水仙の栽培地だった)。そうした事情を知らぬあたしら新参者が、家を建て、防風林を伐採して、後でナキをみている。

 『八丈多与里』でも崖の上の草原に家を建てるに当たって、古老に西側に硝子を使わぬよう忠告されたが、12年後の西風(台風)で800㍍先の黒砂山から飛んできた拳大の石ころに西側の温室、居間のガラスがことごとく直撃された、と記していた。(追記:『八丈島誌』風向は西が圧倒的に多い。11月になると西の季節風期に入る。冬季12月~2月はほとんど西風で、風力も強く毎日のように強風注意報が出ている)

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