SSブログ

『文人悪食』『文人暴食』から『どくろ杯』へ [読書・言葉備忘録]

arasibunjin1_1.jpg 12月の2泊3日「前立腺癌の生体検査」(結果は癌細胞なし)で、血液に大腸菌が入る感染症で15日の入院を余儀なくされた。入院中に嵐山光三郎『文人悪食』も読んだ。これはブログ『泉鏡花』⑥で、同書を本箱から取出したままだったのが眼に入って持参したもの。

 著者の俎上に載るは37名で、既読は3分の1ほど。「黴菌恐怖症・泉鏡花」が麹町移転先ご近所に有島武郎(美形貴公子で波多野秋子と軽井沢別荘で心中)、内田多聞の項から読み始めた。腕に点滴、ペニスにカテーテルながら、著者の各文人の食へのこだわりから、その生と死を展開してみせる文章の冴えに感心しつつ読了。

 で、昨日のこと。ふと本棚を見ると同じ本が2冊~。先日も『資本主義の終焉と歴史の危機』を迂闊にも2冊購ったことに気付いてばかりで「またやったかぁ」と思ったが、よくよく見れば『文人〝暴食〟』だった。

 同書をひも解いた痕跡少なく、途中で投げ出したらしい。改めて幾編かを読んでみたが、やはり面白くない。同書執筆の著者に、他に心惑わせる何かがあったか、はたまた名だたる文人を下世話にぶった斬った不遜に気付いて、前作のように書けなくなったか~。

 そう思って似顔絵(各項冒頭に著者による文人の似顔絵掲載)を見ても、どこかなおざりの感がする。小生、ブログ「泉鏡花シリーズ」で著者と同じ資料から似顔絵を下描き(途中で興味失せアップに至らず)をしたので「フム、ここをこう描いたか」とまで愉しませていただいたが、同書の絵も心あらずと感じた。

 さて『文人暴食』の金子光晴の項を読むと「黴菌恐怖症・泉鏡花」に比して「黴菌大好き・金子光晴」とあった。晩年は「愉快なエロじいさん」で人気者。76歳刊の自伝『どくろ杯』が圧巻と紹介されていた。最近は政経系書を読んでいたので、その『どくろ杯』が読みたくなった。

 同書は金子光晴76歳で40年前の懺悔。氏は同書後に『ねむれ巴里』『西ひがし』と続く大三部作自伝を成したとか。まずは「牛込のボードレール・光晴」が、お茶の水の女子高等師範在学中の「森三千代」と牛込赤城元町の崖下三畳間で、二匹の蛇さながら執拗に絡み合う日々を経て子が生まれ、三千代に年下の男ができ、二人を引き離すようにアジアへ極貧放浪旅へ旅立つ~。

 読めば、安易に「エロじいさん」とは言えぬ巨人。『金子光晴全集』全15巻には凄い世界が展開されていそう。そう云えば彼を「エロじいさん」と記した嵐山光三郎も、一時期、タモリ「笑っていいとも!増刊号」にレギュラー出演で〝昭和軽薄〟と揶揄されていたことを思い出した。金子光晴の世界にちょっとだけ迷い込んでみたくなった。

nice!(0)  コメント(0) 

nice! 0

コメント 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。