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永井荷風と『絵本江戸土産』 [くずし字入門]

ehon9henjyo2_1.jpgehon9henjyo1_1.jpg 永井荷風の『日乗』や『日和下駄』を読むと『絵本江戸土産』や『江戸名所図会』を愛読していたことがわかる。両著が手許にあったのだろう。あたしは近所の図書館で復刻版『江戸名所図会』を読むも、『絵本江戸土産』はお目にかかれぬ。ネットに何巻かのセットで120万円で売りに出ていたが買える値ではない。(写真は東洋文庫ライブラリーより)「黄表紙」の有名作は古典文学全集などに解説・釈文付きがあるも、なぜに『絵本江戸土産』の復刻版がないか。出版社、国文学者の怠慢なり。

 

 荷風さんは明治12年生まれ。父が漢詩人でもあり、父の学んだ儒者・鷲津毅堂の二女が母ゆえに、彼も漢詩をしたためた。比して下町的無教養庶民の子で戦後教育のあたしは、江戸時代の書を読む学力なし。古稀を迎える歳になって「くずし字」初級講座(5回)を受けて、ひらがな中心の「黄表紙」なら、なんとか読めるようになったが…。

 

 猛暑続き。荷風さんのように夕涼み散歩(自転車)に出たいが、冷房装置の室内から出られぬ。テレビは観る気になれぬ低俗さ。かくして、読むもままならぬ『絵本江戸土産』の九編「叙」の解読に取り組んだ。解読できぬ文字が出てくるから、クロスワードを解くような面白さ。まぁ、五十点の出来。どなたか、正しい釈文を下さい。

 

 総(さう)じて遊山観水(ゆさんくわんすい)にて雅となく俗となく。愛(めで)歓(よろこ)ばざる者は稀なり。別(わけ)て江府(こうふ)ハ大都会。名だたる勝地光景(しやうちくわうけい)なれど。他邦(たほう)乃人はなかなかに實地(じつち)を踏(ふミ)も見んこと疑(うた)かり。たまたまニ絵を見つるもの。同好の友に語らんとすれど。詞(ことば)に述(のべ)も尽(つく)されず。書(ふみ)も綴(つづ)りとる事得がたし。其(そ)を目前(まのあたり)見する者(もの)は。画(ゑ)にまさる物(もの)在(ある)まじき。嚮(さき)に一立斎(いちりふさい)主人に需(もとめ)て。此(この)江戸土産十巻(とまき)を描(えがか)し。今其(その)九輯(くしふ)を叢兌(そうだ)しす。十輯(としふ)も稍(やや)刻(こく)成(なり)なん。真(まこと)に画者(ぐわしや)が一世(いつせ)の妙筆(めうひつ)。其地(そのち)を踏(ふま)ずして其地に遊ぶの心地は為(なす)めり。

 明治42年生まれの父は、大正6年生まれの母はスラスラと読めただろうか。今月末日より開始の「古文書中級」2時間5回講義を受講する。


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