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伊藤礼の小型耕耘機から [読書・言葉備忘録]

kouunkiup_1.jpg 伊藤礼著『耕せど耕せど』の冒頭はリョービの小型耕耘機「エンジンカルチベーターRCVK-4200」購入の話から始まる。伊藤翁のリコイルスターターを引っ張る緊張が眼に浮かぶ。

 あたしは耕耘機は持たぬが、伊豆大島の家に小型エンジンの草刈機とチェーンソ―を持つ。数ヶ月、半年振りの大島暮らしで、久々にリコイルスターターを引っ張る時の「エンジン始動するか」の期待と不安たるや。

 小型耕耘機への想いは、さらに社会人スタート時の若き日の思い出へ至る。「新宿御苑前」の広告制作会社にグラフィックデザイナーとして入社。同社は三菱重工のハウスエージェンシーっぽい会社で、仕事は自動車から巨大タンカーまでだが、仕事量の多かったのが農業機械(耕耘機、トラクター、コンバイン等々)のカタログ制作だった。

 同社には農業青年が一人い、彼の出身地・埼玉で農業機械ロケがよく行われた。女性モデルがからむとカメラマンは腰の線が決まらぬとか言って、スカートの中に手を忍ばせていたのを妙に覚えている。「カメラマンになれば良かったなぁ」とも思った。

 農業機械カタログは全体写真から無数の引き出し線を伸ばして、各部のアップ写真とメカ特徴の説明文で構成された。そんな仕事を幾つもこなしたから、今でも複雑に込み入ったレイアウトがあると当時を思い出して職人的快感に浸ったりする。

 と言ってもメカに強いワケではなく〝エンジン始動ならず〟ば誰かの力に頼る他はない。そんな事などを想いつつ、伊藤礼著『耕して耕して』を読み終えた。同著には一枚の写真もなく、その小型耕耘機はこんな感じ~という絵を添えた。

(追記:同書は「ちくま文庫」になって『ダダダダ菜園記:明るい都市農業』タイトルで4月6日発売らしい)


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