ひとり家に居て閑に日を送り~ [暮らしの手帖]
ひとり家に居て、閑(しずか)に日を送り、古書をよみ、古人の詩歌を吟じ、香をたき、古法帖(古今の名筆を鑑賞・手本とした帖)を玩(あじわ)ひ、山水をのぞみ、月花をめで、草木を愛し、四時(春夏秋冬)の好景を玩ひ、酒を微酔にのみ、園菜(野菜)を煮るも、皆是心を楽ましめ、気を養ふ助なり。貧賤の人も此楽しみつねに得やすし。もしよく此楽をしれらば、富貴にして楽をしらざる人にまさるへし。
なにやら「Stay home」の神髄のようです。筆写は天保5年(1834)の浪花・岩井壽樂藏板を参考にした。久し振りの「くずし字」で、筆が思うように運ばぬも、乾き切った筆が墨をふくんで喜んでいた。