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酒なくて何が花見の飛鳥山 [くずし字入門]

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 重長版「絵本江戸土産」下巻は「神田明神」から「飛鳥山花見」へ飛ぶ。釈文に私流メモを交え記す。書き出しは<春のいとゆふ長閑なりし折しも上野ゝ花もふるめかし。> 「いとゆふ」は「糸遊」で陽炎(かげろう)、はかないもの。春の季語。芭蕉句に「入かゝる日も糸ゆふの名残かな」。

 

asukahanamie_1.jpg著者・佐藤要人は、同心監視下の上野の花見は飲酒も出来ぬ。比して飛鳥山の花見は酒も扮装もOKで江戸庶民に人気があったと解説している。ゆえに<いざや飛鳥の花見にまからんとて。毛氈弁当さゝゑなど取もたせて。>と続く。「さゝゑ」は栄螺(さざえ)ではなく、小竹筒で水や酒を入れて携帯するもの。

 

ここから飛鳥山の位置がわかる文になる。<駒込よりあすか山にいたり。四方(よも)を詠(ながめ)やれバ。北の方荒川の流白布を敷たるがごとく。足立の広地。目をかぎりにして。尾久村の農業。民の竈も賑ハしく> 今も山から望む地は変わらねど、風景は激変した。遠くに望む川面が白く輝くのを「白布を敷く」なる表現に感心した。

 

次は飛鳥山の桜の説明。<ことさら此花は尊き仰を下し給ひて。芳野の花をうつし植させ給ひしよし。寔(まこと)に花形尋常に灵(こと)なり。色か香(かん)バしくして。吉野ゝ山の。春の景色も。これには過じと。> 

 

asukahanami1_1.jpgこの桜は八代将軍吉宗が、この地を王子権現に寄進。荒地を整備し梅や松、楓、桜などを植えて桜の名所として有名になった。昔は東の崖からカワラ投げが行われとか。西側は今よりなだらかな斜面だったが、道路拡張で削られた…と歴史碑にあり。

 次の文の「尋常に灵なり」は普通じゃない。「寔」「灵」は旧字で異体字。最期は<春の永き日をおしミて。ゆふくれに宿にいそぎぬ>で締められている。写真は現・飛鳥山と眼下の景色。


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