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見付「むかしたり初てこゝにゆびさして~」 [狂歌入東海道]

29mituke_1.jpg 第二十九作目は「見附」。狂歌は「むかしたり初てこゝにゆびさして見附の宿のふじのいただき」。「昔たり」の「たり=より」。漢字で書けば「昔より初てこゝに指さして見附の宿の富士の頂き」。京からの旅人が最初に富士山を見る地から「見附」。そこを詠っている。

 「天竜川渡し」の絵は、この狂歌とは逆、富士山を背に天竜川の渡しへ至る旅人が描かれている。喜多さんは見附宿から馬に乗り、弥次さんはひとり近道で歩き、この舟渡し場で合流。喜多さんがここで詠んだ狂歌が~

 「水上は雲より出で鱗ほどなみのさかまく天竜の川」。中村幸彦の校注が詳しく説明しているので引用する。「水源は高い信濃に発し、鱗(うろこ)のごとき高波がさかまいている天竜。まさにその名のごとき川である」。そして「水上・雲・鱗・逆巻く」すべてが「竜」の縁語だと説明。縁語尽くしの狂歌。

29kitukebun1_1.jpg 今ではなかなか想起出来ないが、江戸ならば「荒波=鱗風に描く」が浮世絵で普及。そして天竜川を渡った先の町名が〝中の町〟で、次の一首は~ 「けいせいの道中ならで草鞋がけ茶屋にとだへぬ中の町客」。

 〝中の町〟と言えば吉原で、初句「けいせい=傾城」とわかる、「ならで=~でなくて」だから、花魁道中ではなく草鞋(わらじ)がけの旅だが客の途絶えぬ中の町の茶屋の客、という意だろう。

 ここより萱場、薬師新田を経て鳥居松まで来ると、浜松の客引きが出向いて誘ってくる。喜多さん「女のいゝのがあるならとまりやせう」。客引「ずいぶんおざります」。さて~


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