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ジャポニスム18:北斎・遠近法の謎 [北斎・広重・江漢他]

mitiwari2_1.jpg 前項で北斎『〝浮絵元祖〟東都歌舞岐大芝居之図』の遠近法が、歌川豊国を真似ただけとわかった。同右画面の透視線が消失点に集中していたのに、左画面の透視線がズレて(消失領域)いるのは何故だろうか。

 さて、もうひとつ注目の北斎の遠近法が『北斎漫画(三編)』の見開き頁にあった。右図は「三つわりの法」(写真上)。画面縦横三等分の線と透視線が二本。黄金比に近い矩形で左右対象構図。北斎文字は「ここにて三寸のたかさにかゝんときハ」「二ツを天とすべし」「一ツを地となす」。北斎は後にこの構図で『富嶽三十六景・深川万年橋下』を描いた。

 解せぬが左頁図(写真下)。木が約4:6で左寄り(靑線)、建造物透視線(赤線)、帆船らしき船が浮かぶ水平線(緑線)。北斎文字は「間のすじにあわせてかくべし」「かくのごとし」と読める。この図は明らかに左右非対象を主張しているような気がする。

hokusaihitaisyo.jpg この両図はオールコック『日本の美術と美術産業』(日文研データベースで閲覧)に銅板模写で紹介されていた。同著はロンドンで明治十一年(1878)に刊。北斎とは記されぬまま日本の遠近法として紹介されたか。

 この左右非対象図をよくよく眺めれば、どこか異国風ではないか。沖の帆船、人物の帽子やコート姿はオランダ人のシルエットっぽい。北斎は、この図をオランダ資料を見て描いたような気がしてきた。ならば、その元図はどこにあるのだろうか。

 そしてパリの印象派の画家らは左右対称図には見向きもせず、消失点がズレた左右非対象で奥行きを演出したを風景画を幾作も描いていたような~。

 ならばこの左右非対称図はオランダ~日本~ロンドン~パリ~日本を駆け巡ったように思えて、ちょっと愉しくなってきた。次が北斎のバレ句(艶句)について考えてみる。(続く)

 ★なお、岸本和著『江戸の遠近法』を読んだので、その内容を前項「ジャポニスム17」に大幅追記した。同著は多数の歌舞伎座内図に小生と同じく透視線を引いて詳細考察されていた。

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