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飯島耕一『虚栗』の時代~芭蕉と其角と西鶴と(1) [読書・言葉備忘録]

minasiguri2_1.jpg 其角、英一蝶、芭蕉登場の小説『大江戸釣客伝』を読んだので、飯島耕一の表題書を読んだ。幸田露伴『芭蕉と其角』、今泉準一『其角と芭蕉と』を意識し、副題を『芭蕉と其角と西鶴と』。芭蕉と其角に井原西鶴を加えたところがミソ。以下私流解釈メモ。

 ①『虚栗』(天和三年、1683年刊の其角撰集)周辺の芭蕉と其角のあれこれ。まず『虚栗』以前の二人。其角は14歳で芭蕉の門を叩き<十五から酒をのみ出てけふの月>と詠んだ。十七歳からの号は螺舎(らしゃ)。二十歳の螺舎と三十七歳桃青(芭蕉)の句の比較。そして其角五十句(ねりまの農夫VSかさいの野人)を芭蕉が判定・判詞を書いた『田舎の句合』。仲のいい師弟ならではの句遊び。よぅやるねぇ。

 其角二十一歳、天和二年の歌仙「むさしふり」「花にうき世」「我や来ぬ」などを紹介。同年に井原西鶴『好色一代男』刊。同年は綱吉・生類憐令の五年前で、この国の詩と小説が同時期に盛り上がった黄金時と記す。西鶴の若き日の俳諧と放蕩を探り、同年の歌仙「錦どる」参加の暁雲(多賀朝湖、英一蝶)の句にも言及。

 ②天和元年に戻って桃青、其角などによる歌仙「次韻」の桃青<はしたなりける女房の声更て> 発情情景に其角<血摺のねまき夜や忍ふらん> 今日の俳句とは別種の句の光景が展開で、それが当時の新風胎動だと解説。

 ここで改めて井原西鶴の出自から青年期を森銑三『井原西鶴』からひく。西鶴は芭蕉と同世代。其角と同じ十五歳から俳諧を始めた。『好色一代男』は放蕩、俳諧、一日一夜独吟千六百句などの矢数俳諧で鍛えた文体、味の誌的小説だと解説。

 ③再び「錦どる」で「英一蝶」に言及。「荷風の小説にも出てくるこの画家は」とあるが「はて、どの小説か」。再び西鶴に戻る。彼は延宝三年(1675)34歳で25歳の妻を亡くし、名跡を手代にゆずって剃髪して江戸に下った。『好色一代男』の深川、築地、本所など各巻に江戸岡場所が出てくるのを解説。著者の其角らしき幻が出てくる短編現代小説『神田滅多町の女』は同巻三に江戸滅多町が出てくる故とネタを明かしている。(続く)


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