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枕絵の怪し文読み江戸っ子でえ [くずし字入門]

mibobo1_1.jpg十月末、池袋西口「古本まつり」に行った。『くずし字解読辞典』、『東京名所圖會/四谷區・牛込圖之部』、太陽コレクション『かわら版新聞』を購った。他に「くずし字」はないかと探せば浮世絵の枕絵(春画)あり。葛飾北斎の『東にしき』『縁結出雲杉』、重信『柳の嵐』も買った。

 

男なら春画に添えられた「くずし字」をスラスラ読んでみたいと思ったことがあろう。で、まぁ、読めるようになっているんですねぇ。絵は超誇張のスーパーリアルでお見せできぬが、「くずし字」筆写で、自己流釈文でやってみよう。

 

まずは「見ぼゝは毛ぼゝ、しぼゝは小ぼゝ、さぐりぼゝは大ぼゝと誰やらが言った事だが」 …見るぼゝ(開=ぼゝ)は、ふんわり繁った毛開(ぼゝ)に趣があり、致すならば締りの良い小さな開(ぼゝ)がいい。手で探るなら大きい開(ぼゝ)が良いと誰から言ったそうだ。(北斎らしい)。

 

「かう見た所は違へねへ、コレサぢつとしていやな、これも新手で珍しい」。藤兄さんは、いじりながらしげしげと開(ぼゝ)を見つつ、こうつぶやいている。するってぇと姐さんは、たまらず「藤さん何だね、そんな真似をせずと中へ入いんなよ、おらア、もう嫌だのう。気恥しい、そんな所を見せると三年の恋もさめると云うはな、はやく入って抱付いてくんなといふにさ」。

 

姐さん、恥ずかしくもあり興奮もしているようす。見ていないで早く入れてよぅとおねだり。藤兄さん、まだ余裕がある。姐さんの開(ぼゝ)を愉しみつつ、こんなことを言い出した。

 

「コレ此頃聞けば、辰野郎にさせたじやねへか、裾つぱり(裾っ張り、裾張=淫乱女)めへ、させるもいいが覚悟をしてさせや、あとで業恥をはたかねへ用心しろ」。なんと、いたしつつ痴話喧嘩が始まった。「業恥」は知らねど「業腹」はある。「業」は仏教用語で煩悩による「悪業」と解釈すれば、「業恥」は煩悩による恥、大恥。さて、恥は「さらす」で、陰口を「たたく」だが、江戸っ子は恥を「はたく」か。姐さんも藤兄イに反撥する。

 

「ナニ辰べいにさせたと、ヘン、よしてもおくれ、あんなきざな野郎にナニさせるものか、人のことを云わずと、おめへ、お民さんにのろけたじゃねへか」。姐さん、そうやり返したが、今はそんなことより兄さんに真面目に取り組んでいただきたい。

 

「アレサ、そりやア、まア、いゝから、中へばい(「い」の前に「は」欠けだろう)んなといふによ、じれつてゑのう」。「エヽ、もつと足をすぼめやな、口綺麗なことを云わずと白状したうえで、よかるがいねゝ」。

 枕絵の絵は凄いが、文は今のエロ小説に比すれば大したこたぁねぇ。絵は成熟していたが、文章はまだ熟れていなかったのかもしれない。熊さんハっつあんも寺小屋に通っていただろうから、このぐれぇは読めて「ウヒッヒッ」と笑い愉しんでいたかもしれない。


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