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元旦にひよくれんりのなれのはて [くずし字入門]

sinjyuu2_1.jpg 前述の『かわら版』に<元旦心中の次第>あり。知らぬ言葉が多いゆえ、これまた筆写・勉強した。まずは他の多くの「かわら版」同様に格言からの書き出し。「およそ世の中に男女のミちほど遠くてちかく、ふミまよふものハなし」。そして本題へ。

 

 「こゝに浅草広小路に大杉屋といへる遊女やのかゝえ柏木といふ女郎あり、ことしあけて三十一さい、さかりハすこしすぎたれど、きれいこつがら、心だてまで仲の丁ばりのおいらんといへどもおよびなきほどなしが」。

 

浅草広小路は江戸岡場所のひとつ。「こつがら=骨柄=人柄」。「仲」は吉原だろう。「丁ばり」とは? 遊女が格子内で並んでお披露目するのを「張り見世」「見世を張る」。「丁=町」か。吉原・五町を代表する「張り」とでもいう意だろうか。まぁ、器量・人柄を併せての最大級の賛辞。

 

 「いかなる前世のあくゑんにや、去年七月ごろより大久保様の御家中にさらしなといふさむらい、ひとなれなじミ、ひよくれんりのはなれぬ中となりゆくまゝに」。…「ひとなれなじミ=人慣れ馴染み」。繰り返しの強調表現。下世話に云えば「肌がぴったり合った」ってこと。それがどれほど良かったか。「ひよくれんり=比翼連理=相思相愛=離れ難いほど仲睦まじい」。んまぁ、そんな巡り合いをしてみたかった。だが、それほどよろしいと、うつつが溶ける、盲目になる。

 

 「かのさらしなも柏木がまことのこゝろに身を打こんで、雪のふる夜も雨の日もかよひつめたる百夜のちぎり、深きちぎりのふか草や、その浅草のわかれぢに、袖ひきとめしゐつゞけが、かうじかうじておやしきも不首尾となりし」。

 深草と浅草の言い回しは歌舞伎、狂言、都都逸にでもあった言い回しか。悦楽の後には苦しみが待っている。長くなったので次回へ続く。


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