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興津「風ふけば花にこゝろを興津川~」 [狂歌入東海道]

18okitu1_1.jpg 第十八作目は「興津(おきつ)」。狂歌は「風ふけば花にこゝろを興津川あさき瀬にだに袖はぬれけり」。「だに=~なのに」。絵は興津川の川越人足による肩車。女性の着物姿での肩車は、担ぐ方も跨がる方も大変だったのではと思った。保永堂版も興津川を相撲取り二人が川渡りの図。一人は四人がかりの駕籠で、ひとりは馬に乗っている。

 弥次喜多らは雨に降られて、変な茶屋(きな粉ではなくヌカをつけた団子屋)にあきれたりしつつ江尻宿へ。興津から江尻までは、わずか一里二丁。狂歌を詠む暇もなかった。興津宿にはむかし〝清見寺軟膏〟を売る店が十数軒あり。男色趣味系の着飾った美童らが売っていたとか。十返舎一九が好きそうなテーマだが言及なし。きっと享和・文化期にはすでに消滅していたのかもしれない。

 このシリーズは「くずし字」勉強も兼ねているので、彼らが興津宿へ至る文章を筆写してみた。「それより薩埵峠を打越、たどり行ほどに、俄に大雨ふりいだしければ、半合羽打被き、笠ふかくかたぶけて、名におふ田子の浦、清見が関の風景も、ふりうづみて見る方もなく、砂道に踏込し、足もおもげにやうやく興津の駅にいたり」。

18okitubun1_1.jpg18okitukyoka_1.jpg 「くずし字」の勉強を始めた当初に、中野三敏著『古文書入門 くずし字で「東海道中膝栗毛」を楽しむ』を千八百円で購った。これは「五編・上(桑名~伊勢)」のみの版本紹介と解説文。しかし今こうして、大学データベースで全版本を閲覧しつつ、古本の現代文・解説書を参考に遊んでいるわけで「あぁ、無駄な本を買ってしまったなぁ」と後悔なり。同シリーズには「百人一首」「おくのほそ道」「徒然草」などもあるが、これらも大学データベースで版本全頁の閲覧が可能で、数百円の古本の現代訳・解説で充分。小生と同じ貧乏隠居ご同輩へアドバイスです。


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