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『「東京裁判」を読む』(37) [千駄ヶ谷物語]

IMG_0991_1.JPG 『「東京裁判」を読む』は第1章:基本文書を読む 第2章:検察側立証を読む 第3章:弁護側立証を読む 第4章:個人弁護と最終論告・弁護を読む 第5章:判決を読む 第6章:裁判文書余禄。そして各章毎に半藤一利・保坂正康・井上亮の鼎談で構成。

 三者は冒頭で「裁判記録が60年余(2008年)後に公開されて、今は従来の〝東京裁判史観〟軸の政治的解釈ではなく、歴史的に捉えるべき(史実検証)時と確認し合う。かつ東京裁判は〝勝者の裁き〟で、勝者も無制限潜水艦戦、無差別大空襲、原爆投下、さらにはベトナム戦争など〝戦争犯罪〟を裁ける立場ではなく、東京裁判を受けた日本人こそが裁判批判可能と語る。

 それにしても「裁判記録を読むほどに、日本人は無知過ぎた」と三者は嘆く。無理もない。国民も一般兵も耳にするのは〝大本営発表〟のみ。さらに終戦同時に軍部(マスコミも)は戦争資料を徹底的に焼却し尽くした。ドイツ文書は保存されているも、日本人は歴史に対する責任皆無。これでは弁護ができるはずもない。法務省地下倉庫に30年余も眠ったままで、国立公文書館へ移って公開された資料は、焼却を免れたものばかり。いきおい『高松宮日記』『原田日記』『木戸日記』などがクローズアップ。公文書破毀、隠蔽、改ざん~ 現在の日本行政も余り変わっていない。

 第1章:基本文書を読む ~の鼎談では「東京裁判」はポツダム宣言(軍隊降伏で、国家は無条件降伏ではない)を根拠で行われたマッカーサー裁判。同元帥は天皇を訴追しない、東條と数人を裁いて終わりの予定だったが、ニュルンバルク(ドイツ)裁判の「平和に対する罪」「人道に対する罪」を採用したことで訴追対象が拡大したと指摘。

 第2章:検察側立証を読む ~の鼎談ではA級(級=カテゴリー)で百人余も逮捕するも、冷戦開始で裁判どころではなくなってA類戦犯28名に止まった。メインの南京事件も資料なしで証言だけ。20~30万人説もあるが半藤は3万人で、秦郁彦調べでは4万人とか。先日(5月13日)、BS日テレNNNドキュメント’18で「南京事件Ⅱ」の再放送を見たが、兵士インタビューや焼け残った資料からの再現映像があって、観ていて鳥肌が立った。

 半藤「日本は中国と何のために戦争をしているのか分からなくなって政府発表した。それが<日中戦争の理想は我国肇国に精神たる八紘一宇の皇道を四海に宣布する一過程として、まず東亜に日・満・支を一体とする一大王道楽土を建設せんとするにあり>。何年か前に、若い女性タレント議員が国会で「八紘一宇は大切な価値観」と言ったニュース映像が流れ、腰を抜かしたことがあった。

 またこんな記述もあった。保坂「東条は国際法を知らない。無茶苦茶です」。半藤「当時の日本の指導者には国際法の知識がなかったんですよ。みんな〝夜党自大〟であった」。保坂「東京裁判の怖いところは、被告たちの証言で彼らの無知、愚かさが浮かび上がってくるところです」。おぉ、怖い怖い。今も為政者のレベルは同じような気がしてなりません。(続く)

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