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檀那ゆえ旅の手形を寺が出し [くずし字入門]

danna1_1.jpg 江戸時代の「往来手形」の古文書を筆写していたら「旦那」が出てきた。…右の者宗旨代々浄土宗にて、即(すなわ)ち拙寺旦那に紛れ御座無く候、然る処、此度心願の儀これ有り候に付き、四国巡拝致したく候間、国々御関所相相違無く御通し下さるべく候

 

この古文書から「あぁ“旦那”は檀那、檀家なんだ」と遅まきながら知った。サンスクリット語「ダーナ」からの仏教語。「与える」「贈る」の意。お寺にお布施をするのが「檀那・檀家」。「菩提寺=檀那寺」。

 

亡き父が、年金暮しに係らず菩提寺からなにかとお布施を請われてホトホト弱っていた。父が亡くなり、お寺さんと縁を切って公園墓地にお墓を移した。これで気軽に墓参りができるようになった。一人っ子のかかぁの両親の墓も都営霊園で、坊さんとは余り縁がない。

 

江戸時代は「寺請制度(檀家制度)」で誰もが檀那寺をもたねばならなくなって、「往来手形」は古文書例の通り、お寺がこの人物は拙寺の旦那だと証明して交付したそうな。江戸市中なら家主が身分を証明。女性だと檀那寺や町村役人も「往来手形」を交付できず、「町奉行」だったとか。この「寺請制度」による宗門人別改帳が、住民票になった。つまり寺が幕府の役所になって、そこからお寺は宗教活動をおろそかにして汚職の温床にもなったそうな。明治維新の「廃仏希釈」のエキセントリックな状況の裏には、そんな寺への怒りもあったらしい。ちなみに関所が廃止されたのは明治2年1月。というワケで、古文書から歴史のお勉強に広がった。

 

今なら「往来手形」に替わるのが「パスポート」。戸籍謄本(抄本)と住民票、自己確認の運転免許証を揃えれば国が交付してくれる。机の奥深くに確か10年有効のパスポートがあったはずだが、もう、この歳では海外に行くのも億劫ゆえに探し出すこともなかろう。


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