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鶉衣8:六十齢説‐夫だけのはぢ紅葉 [鶉衣・方丈記他]

60yowai1_1.jpg 五年前のブログに「ブログ記し六十半ばのはぢ紅葉」なる題をアップし、これは也有翁の「六十てふ身や夫たけのはち紅葉」の戯れ句と記していた。当時は「くずし字」が読めず、現代訳文を読んでいた。改めて「六十齢説(むそぢのよはひのせつ)」の原本筆写・釈文です。

 上壽(じょうじゅ)ハ(は)百歳、中壽ハ八十、下壽ハ六十とかや。蒲柳多病の身の、いかで(如何で=どうして)六十の齢に至り、かの壽の数にハつらなりけん。けふハ長月の四日(元禄十五年九月四日生まれ)、我生れたる日なりけり。世の人の賀(年寿、賀の祝い)とてもてさハくハ(もて騒ぐは)此日なり。

 妹あり妻あり男女の子と(ど)もあり。かれらは心にハうれしとも、めてたしとも(嬉しとも目出度しとも)思はゞ思ひもすらめ、只犬馬の年老たるにこそあれ。もしハ(若しは=もしくは、あるいは、または)かなたこなた(彼方此方)に詩を乞ひ和歌もとめなと(求めなど)して、世にしられ顔なる、我に於てハいと耻かし。

 必(ず)音なせそとかねていましめて(予て戒めて)さる事せず。げにや(実にや、本当にまぁ)古人の耻多しといひけん、我は愚に知らずとも、人はかぞへても笑うらんを。六十てふ(といふ)身や夫(それ)たけのはち(ぢ)紅葉

 この時代の文書は濁点がないので、ここは濁点かなと推測すると容易に読める。「は=ハ」も多い。「耻」は「恥」の俗字。「すらめ」は「す」+「らむ」已然形=~するだろうか。「只犬馬の年」は諺「犬馬の齢(けんばのよわい)=たいしたこともせず、ただむだに年をとること。

 「音なせそ」は手こずった。「平家物語」に「かかる折節に音なせそ」あり。解釈文に「この時期に騒ぐべきでない」とあり。与謝野蕪村句に「音なせそ叩くは僧よ鰒(ふくと)じる」。古語辞典(旺文社)に「はせそ」はない。ネット検索「学研全訳古語辞典」で「なーせーそ」。連語。副詞「な」+サ変助詞「す」の未然形+終助詞「そ」=するな。難しく考えなくも「な」は禁止。~するな。「音なせそ」=物音をたてるのを禁止、静かにしていろの意か。ややこしいゆえ、ここは丸暗記がよろしいようで。


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