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鶉衣15:煙草説‐琴・詩・酒より優る [鶉衣・方丈記他]

tabako1_1.jpg 夜道の旅のねぶたき(眠たき)とて、腰に茶瓶も提(さ)られず、秋の寝覚の淋しきとて、棚の餅にも手のとゞかねば、只この煙草の友となるこそ琴・詩・酒に三ツにもまさるべけれ。揬(て扁+突=くど=竈=かまど、へっつい)のもえ杭をさがしたるは、宰予(さいよ=孔子の門人)が昼ねの目ざましにて、行灯に首延したるは小侍従の待宵の小侍従ならむ。達磨は九年の壁にむかひて、炭団の重宝を悟り、西行は柳陰にしばし火打の光を楽しむ。

 「論語」引用・もじりが多いので、中国古典選『論語』(上下、吉川幸次郎著)の古本を購った。「宰予が昼寝の目ざましにて」は「公治長五」にあり。「宰予昼寝 子曰 朽木不可雕也 糞土之牆 不可杇也~」。宰予は昼寝ばかりしている。孔子は朽ちた木に彫刻はできぬ、悪い土で壁は塗れぬように、彼を叱ってもしょうがない。まぁ、そんな意のことが書かれているそうな。徂徠は「昼日中から女とねている」と解釈したそうな。昼寝から眼めてへっついの燃えさしで煙草の火をつけた、なぁ~んてことは書かれていなかった。

 「待宵の小侍従」は「平家物語」の「蔵人伝」の行灯に首延したる、からとか。背が低い女房(奥向きの女性)ゆえに〝小侍従〟の名がついたそうな。あたしは哀しいかな「論語」も「平家物語」も頭に入っていないから、読みつつニヤリと味わう妙には至らぬ。「達磨」が本当に炭団で煙草の火をつけたかも知らない。いや、これは「だるま葉」が代表的〝葉たばこ〟のことだろう。「西行法師」は旅をしながら酒と煙草をこよなく愛したとは容易に想像できる。次を読む。

kiseru2_1.jpg されば出女(宿場の客引き女)の長ぎせるは、夕ぐれの柱にもたれて、口紅兀(はが)さじと吸ひたる、少しは心づかひすらんを。船頭の短ぎせるは、舳先に匍匐(はらばひ)で有明の月を詠(なが)めながら、大海へ吸がら投げたるよ、いかに心のはれやかならむ。

 あたしはチェーンスモーカーだった。一日に四十本余。だが一度の禁煙でスパッと止められた。コツを教えよう。吸いたいと思うのは「ニコチンスキー」という奴が囁いてくるからで(と擬人化して)、そいつと闘えばいい。負けず嫌いな人は、簡単に〝彼〟との闘いに勝てる。


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