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日本語(5)和文の創造・紀貫之 [くずし字入門]

kokinkanajyo_1.jpg 続いて小池著のⅡ章「和文の創造・紀貫之」を読む。奈良時代に大伴家持(やかもち)らによって天皇~乞食までの歌が網羅された『万葉集(一大国民歌集、万葉仮名)』が生まれた。(2)で「吾勢子波借盧作良須草無者小松下乃草苅核」の一例を紹介済。

 そして平安前期、紀貫之(きのつらゆき)らによって、今度は貴族・僧侶中心の平仮名『古今和歌集』(延喜5年・905)が生まれた。紀貫之の一首は紹介済だが『古今和歌集』には有名な「仮名序」、漢文の「真名序」あり。「仮名序」冒頭(写真左)を読んでみる。「やまとうたは人の心をたねとして よろ川のことのはとそなれりける よの中にある人ことわさ志けきものなれば こころにおもふことを~」。

 さらに有名な二首を紹介してみよう。在原業平の〝都鳥の歌〟(写真下左。慶長13年刊の嵯峨本より)は「名にしおハゝいさことゝハん宮古鳥 わか思ふ人はあり屋なしやと」とよめりけ禮ハ~。

 次は国家の基歌。~たいしらす よみ人しらす(題しらず 読人しらず)「わかきみはちよにやちよにさされいしのいわおとなりてこけのむすまで」(濁点なし)

 『古今和歌集』をもって「仮名」が公認、市民権を得た。「仮名」は漢字の意を捨て、音だけを利用した「万葉仮名」を、多くの人々が草書で簡略書き(草仮名)するうちに次第に固まった日本オリジナル文字の誕生。

nanisioha_1.jpgkokenomusumade_1.jpg 「平仮名」に後れをとった「片仮名」は、寺院での講義ノートから生まれた一種の速記文字として発達したらしい。「平仮名」誕生は「和歌」を発達させ、文字社会の成熟も生んだ。作者不詳の歌物語(和歌にまつわる説話を集成した物語文学)の『伊勢物語』も誕生した。

 当初の和文は、和歌と消息(手紙)から発達したが、「消息=話ことば」をそのまま書きことばにして〝だらしない〟印象があった。そこで漢文を基に(後ろ盾にして、養分を摂取しつつ)次第に磨かれていった。

 紀貫之はその後に『土佐日記』も著わす。同作は男である貫之が、女に仮託して述べる虚構で、その方法もまた文芸の香り高さを有する日本文学の礎になった。著者は夏目漱石の「吾輩は猫である。名前はまだない」と書き出して「猫」に仮託してしゃべらせる~に通じていると指摘していた。

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