SSブログ

馬琴「俳諧歳時記」=メジロは秋 [暮らしの手帖]

saijiki3_1.jpg 駄句遊びをしていると「季語」に〝ひっかかる〟ことがある。花鳥は自分の眼で見て撮っている(実景)ゆえに、「歳時記」の季とずれることまま也。机上の歳時記(大岡信監修、遊子館刊、写真)では〝メジロの季は夏〟で腑に落ちぬ。

 あたしはブログ・タイトル欄を「五七五」にしているだけで、とても〝俳句趣味〟とは言えぬレベル。初めて〝季語って何だ〟と、ネット巡りをしてみた。寛永13年(1636)刊の野々口立圃『はなひ草』で590の季題を網羅。慶安元年(1648)に北村季吟『山の井』で1300語を収録。享和3年(1803)に曲亭馬琴『俳諧歳時記』が2600の季語を網羅。「季題」なる言葉は明治36年(1903)に森無黄が初めて使い、「季語」は明治41年(1908)に大須賀乙字が初めて使ったとあった。なぁ~んだ、えらく最近のことじゃないか。

 ここで早大「古典籍総合データベース」にアクセスすれば『俳諧歳時記 春、夏、秋、冬、雑之部』曲亭主人纂輯2冊がヒットした。享和3年(1803)刊。「春之部」正月、二月、三月。「夏之部」四月、五月、六月。「秋之部」七月、八月、九月。「冬之部」十月、十一月、十二月。「秋之部」八月に「繍眼児(メジロ)」があった。

mejirosisyuup_1.jpg 机上の歳時記は「春」が立春の二月四日頃~立夏前日。「夏」が立夏の五月六日頃~立秋前日。「秋」が立秋の八月八日頃~立冬前日。「冬」が立冬の十一月七日頃~立春前日。それでメジロは夏の季。

 以上から旧暦・新暦のズレに気付く。旧暦は新暦より約一ヶ月遅い。馬琴『俳諧歳時記・秋之部』は享和三年八月一日からだから、新暦変換すれば九月十六日。つまり馬琴は新暦九月中旬期にメジロを括った。

 メジロの季が夏または秋と言われるのは、この旧暦・新暦の混乱からきているのではないかと推測するがいかがだろうか。いや「メジロ・三夏」とする歳時記もある。旧暦4・5・6月=初夏・仲夏・晩夏。う~ん、どうも定まらぬが、馬琴がメジロを「秋之部」八月、つまり九月中旬頃としたのが最も納得できる。実際に「熟柿にメジロ」はよく眼にもする。

 しかしあたしにとってのメジロは「梅にメジロ」「桜にメジロ」「椿にメジロ」で春のイメージが強い。ちなみに年中見られる「月」は何故か秋の季。俳句の季語は相当に「緩く」また「訳あり」と踏んだ。★追記/金子兜太『俳句入門』:俳句の季節は「旧暦」を使います。中村草田男『俳句入門』:今の「歳時記」は新暦で編まれており、新しい社会の行事が新季語として取り入れてあって便利です。★えぇえい、いってぇどっちだ!

 メジロは「繍眼児(シュウガンジ、メジロ)」の表記。これはメジロの眼の周りが白の絹糸で刺繍をされているようだからとか(アップ写真参照)。次に実際に馬琴『俳諧歳時記・秋之部・八月』を読んでみる。(続く)


コメント(0) 

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。