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澤田ふじ子『花篝』の日本画語彙? [読書・言葉備忘録]

hanakagari_1.jpg 澤田ふじ子の小説日本女流画人伝『花篝』収録12編より、まずは葛飾北斎の娘・応為(お栄)主人公の『野狐』を読んだ。お栄の評伝・小説は幾作か読んできた。外国女性作家の力作『北斎と応為』も読んだが、やはり江戸文化・情緒を描くには無理っぽかった。

 『野狐』は僅か文庫30頁の短編だが、お栄の存在感、吐息までが伝わってくるようで「うまいなぁ」。氏の時代小説は初めてゆえ、どんな作家かしらと調べれば、池坊専応を描いた『花僧』を、松岡正剛「千夜千冊」が取り上げていて「そうとううまい。いつも堪能されてきた」と記していて驚いた。

 応為の他11編は、主に日本画系かつ京都に生きた女性画家が主人公。小生、日本画に無知。また関西系日本史も無知ゆえに全篇が新鮮だった。日本画については、九鬼隆一の妻・初子と岡倉天心の不倫がらみで、初子モデルの狩野芳崖『悲母観音』について少し記した程度。かくして同短編集から日本画関連かな?の語彙のお勉強にもなった。例えば~

 丹靑=絵具、彩色、絵画。略筆=要点以外を省略して描く、書くこと。規矩=手本、規則。披麻皴=山水画における皴法。毛筆さばきで山、岩、樹幹などの襞を立体的に表現する技法のひとつ。渇筆により麻の繊維をほぐしたように波打たせて山や岩の襞を表す法。破墨=南画に多用される水墨画技法。薄墨で描いた上に次第に濃い墨を加え、墨色の濃淡やにじみ具合の趣をみせる技法。点綴=物がほどよく散らばっていること。臨写=手本を見て描くこと。彩管=絵筆。墨守=頑固に守ること。儒教の〝仁〟を差別愛とし、血縁によらない反戦・平和を説いた墨子より(ウム、墨子もお勉強しなくては~)。絵の妙諦=真理・真価・真髄。画幅=絵の軸物。等々~

 またそれらに関連して~ 短檠=背の低い行燈。儀軌=方法、規則、典籍。天稟=才能。藹々=和やか。沛然=雨が盛んに降るさま。蕭条=物淋しいさま。桎梏=手かせ足かせ。暮靄=夕のもや。さらにスケッチブックより「画帳」がよく、絵道具、筆の引きよう、妙線、筆数、画趣、画事などもいい。

 同氏による〝江戸〟女流画人伝『絵師の首』もあるとかで、それは図書館で借りて読んだ。『花篝』と同じ文体を期待したが、ガラリッと違った娯楽時代小説風で、スラスラと半日で読了。なぜそうなったかを探っても詮無いことゆえ、そこは流す。

 また『花篝』最終編『あしたの雲』は、〝応仁の乱〟当時の後柏原天皇に仕えた勾当内侍・妙子の話。これを読んで、俄かに「応仁の乱」をお勉強したくなって、また古本探しのウォーキング再開に相成候。

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